第39章 覚醒するモジュレーション【壊玉】
「…………姉、さん……?」
そこにいたのは、血だらけで倒れた姉と黒井だった。
【薨星宮】――その入口は聞いていた。昇降機を降り、見つけたのだ。
受け入れがたい目の前の現実を心は拒絶するのに、冷静な頭は理解する。
五条が負けた――そして、黒いあの男が理子を追ってここに来たのだと。
「“星良ちゃん”……“星良ちゃん”っ‼」
姉に駆け寄り、呼吸を確認する。弱いが、微かに息がある。黒井も確認したが、彼女は完全に絶命していた。
星良の身体に【守護】の文字がいくつも刻まれていることは知っている。だから、姉から護符を渡された際も、遠慮なく受け取った。
その【守護】の術を全て使い切るまで……何度 刀を突き立てたんだ、あの男は……!
「ん……う、ぁ……!」
星良の術式が発動している。これは、【反転術式】?
生きようとしているのだ。
正の呪力は使えている。ただ、【反転術式】を使った回復に作用できていない。
怒りに震えるのは後だ。
星良が生きているのなら、自分にできることは一つ。それ以外は全て後回しでいい。
――【反転術式】。自己修復は問題ない。けれど、自分以外の“人間”に使うのは初めてだった。
動物で試したときは成功したのだ。だったら――……。
「……【薬師世尊に帰命し奉る。瑠璃光の王、真実に至りて示す者、敬意を払われし者、宇宙の遍く全ての現象を知る者よ。四百四病をも癒す妙なる医薬、霊薬、偉大なる秘薬を此処に顕現し給え】……‼︎」
いける……!
【薬師如来】の力を借り、星良の傷を癒す。
自分の身体を治癒する呪力で理解したのか、星良の呪力も合わさり、瞬く間に姉の身体の傷は癒えた。