第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「なんだ、アイツら。高専に戻んなかったのか」
甚爾は耳と肩の間で挟み、割り箸をパキッと割るとたこ焼を頬張った。
「ラッキーだったな。これで賞金につられるのが、バカからまともなバカになる」
熱々のたこ焼きを堪能していると、『いいのか?』と電話の相手――孔 時雨が不安そうな固い声音で聞いてくる。
どうやら、まだ手付金を使って呪詛師を募ったことが気になっているらしい。
はぁ、と大きなため息を吐き、甚爾はたこ焼きを突いた。
「あっちには五条 悟がいるんだぞ」
うん百年ぶりの【六眼】と【無下限呪術】の抱き合わせ。五条が近くにいる限り、【星漿体】は殺せない。
それに、孔は油断しているが、あの黒髪の子ども――神ノ原の小僧も要注意だ。
呪術界のキナ臭い情報の収集に長けた連中に聞いたことがある。
神ノ原の嫡男が持っているのは【陰陽術式】。数ある術式の中でも古い部類で、あらゆる状況に対応できるチート術式だ。
今は子どもで、術式の練度は未熟だが、あと十年もしたら五条に勝らずとも、それなりの障害にはなったことだろう。
けれど、依頼を完遂させる上で、舐めてかかっては痛い目を見るかもしれない。
「とりあえず、バカ共には賞金のかかっている残り四十七時間――五条本人とその周りの術師の神経を削ってもらう。もちろん、【星漿体】は殺せねぇからタダ働きだ」
『時間制限を設けたのはよかったな。呪詛師の集まりがスムーズだ』
孔の感心した声に「それだけじゃねぇ」と小さく呟く。
電話の向こうで首を傾げる気配を感じたが、甚爾は「こっちの話」とはぐらかした。
たこ焼きを食べ切り、席を立つ。
「ボチボチ俺も向かう。思っていたより展開が早そうだ。三〇〇〇万、しっかり戻せよ」
『バカ言え。その辺の匿名掲示板じゃねぇんだぞ』
掲載料、手数料、その他――……と並べ立てる孔に、甚爾は「電波が悪い」と携帯を軽く放り投げ、一方的に通話を切った。
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