第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
「あの喋り方だと友だちもいないじゃろ」
「快く送り出せるのじゃ」
「学校じゃ普通に喋ってるもん!」
口調を真似してからかってやると、スカートの裾を握り、天内が顔を赤くして反論してきた――すると、黒井が「あ」と顔をしかめる。
同時に天内もハッとした顔で「学校!」と声を上げた。
「黒井! 今 何時じゃ⁉」
「まだ昼前……ですが、やはり学校は……」
「うるさい! 行くったら行くのじゃ‼」
駄々をこねる天内に、黒井が助けを求めるように星也を見る。
おい、ソイツ 八歳のガキだぞ。せめてこっちにお伺い立てろよ。
「構いません。行きましょう」
考える素振りを見せることなく、星也は即答した。
「オイ、クソガキ。学校って……ふざけてんのか。高専にとっとと連れてった方が安全だろ」
「私も同意見だ。またいつ襲われるかも分からない。場所が学校なら巻き込まれる人間も出てくる」
胸倉を掴むも、少年に怯む様子はない。夜色の瞳で、サングラスの奥にある五条の空色の瞳を静かに見つめ返してきた。
「天元さまのご命令です。なんなら、高専に確認してください。きっと同じように言われますよ」
「リスクは承知の上。あたしたちがここに留まるのも同じ理由です。できるだけ足手まといにならないようにしますね」
困ったように笑いながら、星良も眉を下げる。
黒井が自動車を手配し、一同は天内の通う学校へと向かった。