第34章 皆と過ごすディヴェルティメントな日々
「【君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな】」
ポゥ…と光が溢れ、順平の腕を包み込む。
「ありがとう、神ノ原さん」
「詞織」
「……うん、詞織ちゃん」
少し離れた場所では、ダンッ、バシッと激しい音を立てながら、虎杖と伏黒が激しく拳を打ちつけあっていた。
伏黒も強いが、さすがに虎杖には敵わないようで、やや劣勢だ。
「それにしても、詞織ちゃんはすごいね。【反転術式】って、すごく難しいって五条先生が言ってたよ。誰にでも使えるモノじゃないって。人に使うってなると特に」
「確かにそうだけど、神ノ原の人間にとっては他の人たちほど難しくない」
「え、そうなの?」
聞き返すと、詞織はコクリと一つ頷いた。
「わたしたち神ノ原の術師の呪力には癖があって、反転した呪力を生みやすい。もちろん、それなりに修練は必要だけど」
詞織は元々 詩音が使っていた感覚をベースに見よう見まねで始めたが、交流会以降は家入に師事し、基礎から学び始めたのだそうだ。
「ジュンペーが怪我してくれるから、いっぱい練習できるし、段々 マシになってきてる」
「そう言ってもらえると……」
いや、別に嬉しくはない。感謝はしているが。
「それより、どう? ジュンペー」
「うーん……何か違うんだよなぁ。【澱月】、もう一回いい?」
思い出せ。あの皮膚が腐食して爛れる感覚。
同じ術式を食らった虎杖が言うには、これは結果 有毒なだけで、本質は『分解』にあるらしい。
分解、か……。