第34章 皆と過ごすディヴェルティメントな日々
コンコンッと順平は詞織の部屋をノックした。
しかし、部屋の主が顔を出すことはなく、もう一度 ドアをノックしてみる。
「いないのかな……高専にはいるはずだけど……」
「ん? 順平、どした?」
「虎杖くん」
呼びかけると、虎杖はゆっくりと歩いてきた。
「神ノ原さんに用事があったんだけど、留守みたいで……」
「伏黒のとこじゃね? 行ってみようぜ」
「え⁉︎ それはちょっと……」
全く考えなかったわけではないが……さすがに、彼氏と一緒のところをお邪魔するのは……。
詞織は気にしないだろうが、伏黒がどんな顔をするか分からない。
それに、恋人同士だ。もし、万が一 タイミングを間違えようものなら……。
あわわ……と顔を赤くして慌てるも、虎杖はスタスタと伏黒の部屋まで来て、コンコンッと躊躇いなくノックした。
「伏黒ー、詞織いる?」
コンコンッともう一度 虎杖はノックを繰り返す。
待て待て。まだ心の準備が!
すると、ガチャと扉が開かれた。
「ユージ? なに?」
詞織が出てきた。
目、潤みなし。
呼吸、顔色 正常。
服、乱れなし。
髪、乱れなし。
よし、大丈夫だ。
恋人の愛の語らいに邪魔したわけじゃない。よかったー!
「あぁ、俺じゃなくて順平が……」
「へぇ。わざわざ俺の部屋まで来て……よっぽど大事な用事なんだな」
あ、邪魔したんだ。
詞織といるところに割って入るのは全部 邪魔した感じなんだ。
怖い怖い!
ただでさえ、普段から仏頂面で話しかけにくいと思っているのに、今日はまた一段と怖い‼
「で、なに? ジュンペー」
「あ、えっと……」
「メグのことなら気にしなくていい。いつも一緒にいるし」
伏黒を窺う視線に気づいた詞織が話を促してくれるが、きっとそういうことじゃない。
いつも一緒にいるとかいうのは関係ないのだ。本当なら四六時中 一緒にいたいのに邪魔しやがって、と思っているのだろう。
ただ、こちらも遊び半分や冷やかしで来ているのではないので、お言葉に甘える。