第33章 アモローソに募らせた再会【そういうこと】
「卒業式の日、勇気を出して一緒に撮ってもらったんです」
本当なら連絡先なども聞きたかったが、そのときはすでに、東京へ引っ越すことが決まっており、聞けなかったらしい。
「でも、さっき虎杖君を見かけて、今の私ならもしかして、なんて……」
なるほど、と釘崎は合点がいった。
「優子、それって……つまり“そういうこと”ね⁉」
「はい! そういうことです‼」
ならば事は急を要する。
釘崎はすぐに、詞織へ電話をした。
「あ、詞織? まだ伏黒とこの辺りいる?」
『いるけど……何? どうかした?』
「お店のURL送るから、すぐに伏黒と来てちょうだい」
『急ぎ?』
「急ぎ」
『分かった。すぐ行く』
ナイス、詞織!
伏黒に連絡したものなら、詞織と二人の時間を優先したいから絶対に来ない。
けれど、詞織なら何も言わずに来てくれるし、可愛い恋人の頼みを伏黒は断らない。
「あぁ、あたしってとんだ策士ね……そうだ。吉野にも連絡するか」
あちこちに電話をかける釘崎を、優子は戸惑った様子で見ているが、気にしていられない。
「もしもし、吉野?」
『釘崎さん? どうしたの?』
よかった。
映画を観に行くと言っていたが、まだ間に合ったようだ。