第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
順平は虎杖、釘崎、詞織と森の中を歩き、八十八橋の下へ向かっていた。
「さっきの呪霊――じゃあ、人間だったってこと?」
「そう。呪物を呑み込んだ人間。だから、呪霊みたいに消えず、遺体が残る」
――「人を……殺したことある?」
虎杖と初めて会った日、彼に聞いたことがある。
いつか悪い呪術師と戦うこともあるだろう、と。「殺したくない」と言った虎杖に、「悪い奴なのに?」と問いを重ねた。
それが今、現実に起こったのだ。
けれど、『悪い奴だから殺した』なんて、割り切れるものでもなくて……。
「順平、大丈夫か?」
虎杖が心配そうに振り返ってきた。
「どう、かな……」
手が震えている。
驚いているし、動揺している。
「気に病む必要はない。手を下したのはわたし。順平は何もしてないでしょ?」
詞織は淡々としていた。
まるで、何もなかったように。
詞織に責任を押しつけたら楽だろう。
それでも――……。
「動きを封じたのは僕だ。神ノ原さんだけの責任じゃない」
そう、と詞織は悲しげな微笑を浮かべた。
「釘崎と詞織は……初めてじゃねぇの?」
虎杖の問いに、二人は顔を見合わせた。
「……アンタは?」
逆に釘崎に聞き返され、虎杖は視線を逸らす。