第31章 もっと強くフェローチェに【起首雷同】
襲い来る血の矢も追いつけないほど、虎杖は駆け抜けた。
やがて森を抜け、車道へと出る。
追いかけてきていた血の矢も、虎杖たちに届くことなく立ち消えた。
「うっし、射程外だな」
虎杖は釘崎を地面に下ろす。
「よくやった。褒めてつかわす」
高慢な物言いに「ヘイヘイ」と呆れて返すと、釘崎は少し笑いながら「ウソ」と言って、改めて礼を言ってくれた。
そこへ、ハッと二人は振り返った。
気づいたときには遅く、血の矢が釘崎を背後から貫く。
「釘崎!」
痛みに膝を折る釘崎に駆け寄ると、再び血の矢が襲いかかってきた。彼女を庇う虎杖の背中に突き刺さる。
血の矢が穿たれた箇所は制服が溶け、ジュゥゥゥゥッと皮膚が爛れた。
撒いたと思って、完全に油断していた!
壊相が赤黒い翅で飛びながら道路に降りる。
『心配しなくても、全身に浴びでもしない限り、死にはしません。まぁ、死ぬほど痛みますがね。“私たち”の術式はここからです』
――【蝕爛腐(しょくらんふ)術 朽(きゅう)】
虎杖と釘崎の身体に薔薇のような花の痣が現れる。
『私の血を取り込み、術式を発動すれば、侵入箇所から腐蝕が始まります。そちらの少年はもって十五分、お嬢さんの方は十分が限界でしょう。弟も同じ術式を持っていましてね。先ほど発動したのを気配で感じました。あなた方も、一緒に逃げていたお嬢さんと少年も、朝には骨しか残りませんよ』
「やっぱ毒か!」
『結果 有毒なだけであって、私たちの術式はあくまで「分解」ですよ』
だが、術式ということは、解除させちまえばいいだけの話。
『さて、どうします?』
虎杖の視線の先で、壊相は挑発的な笑みを浮かべた。
* * *