第3章 はじまりのプレリュード【両面宿儺】
「人の身体で何してんだよ。返せ」
『オマエ、何で動ける?』
「いや、俺の身体だし」
一人で喋り出した虎杖に、詞織は混乱した。
何がどうなっているのか分からない。
分からないけれど……分かっていることもある。
特級呪物――【両面宿儺】が受肉したという事実だ。
それならば、自分がとるべき行動は一つ。
「動くな」
詞織が動くより、伏黒が動く方が早かった。彼は低い声で虎杖に命じ、指を組む。
「オマエはもう、人間じゃない」
間抜けな表情で「は?」と虎杖が振り返るが、それが虎杖本人なのか、それとも本人を装った宿儺なのか、全く分からない。
詞織も、いつ豹変して襲い掛かってきても対応できるよう、頭の中で防御効果のある歌を反芻する。
「……呪術規定に基づき……」
「虎杖 悠仁……オマエを……」
「「――【呪い】として祓う(ころす)」」