第22章 終わらないロンド【黒閃】
「アイツはすごいな……本当に」
「メグが詩音を褒めるなんて……どうしたの?」
いつか、詩音を祓う。
その気持ちに変わりはない。
詞織を守るために命を絶った彼女の双子の姉。
伏黒も、詞織を守るためなら命を懸ける覚悟がある。
けれど、詩音はそれを本当に実行し、【呪い】となった。
詞織を今でも過去に縛りつけようとするアイツが許せない。
許せなくて――同時に、尊敬する。
「俺は……お前の一番にはなれない。こうやって触れて、キスして、何度お前を抱いても……どこまでいったって、俺はお前にとって二番目の人間だ」
「メグ……わたしは……」
声を震わせ、不安げな瞳で見上げてくる彼女に、伏黒は微笑みかけた。
「そんな顔すんな。責めてるわけじゃない」
詞織に一番に想われていることが詩音にとっての誇りなら、詞織に二番目に想われていることは、伏黒にとっての誇りだ。
――『伏黒 恵。あたしが表に出られない間は、とっても不本意だけど、詞織のことを任せるわ。世界で二番目……あたしの次に、この世で詞織を愛しているあなたにね』
「いいよ。俺はこの先ずっと、お前の二番目で」
それを望んでしまったら、詩音の覚悟も、詞織のこれまでの人生も、全て否定してしまうことになる。
「心は……詩音にくれてやる。俺以上に詞織を愛してるアイツに。だから、せめて身体は俺にくれ」
願うようにもう一つ所有印を刻むと、詞織が「うん」と一つ頷いた。
「詩音のことは、世界で一番愛してる。でも、メグのことは、世界で一番大好き。これだけは、“絶対”に変わらないから」
ちゅ…と詞織からの控えめなキスに、胸がじわりと熱を持つ。
この場で彼女を抱くことができない分、二人は戯れ合うようなキスを何度も繰り返し、互いを抱きしめた。