第22章 終わらないロンド【黒閃】
垂水が出て行くと、伏黒は家入にベッドへ寝ておくように指示された。
詞織はお目付け役とかなんとか言って、ベッド脇に椅子を用意される。
実際は気を利かせたつもりなのだろう。
「あんまり騒がしくするなよ。隣には狗巻と加茂も寝てるからな」
揶揄うように言う家入に、思わず頬が引きつった。言外に、ここで盛るなと釘を刺されたのだ。
「はぁ……」
「メグ、大丈夫? まだ痛い?」
「いや……そういうわけじゃない」
心配そうに眉を下げる詞織に、自分の不甲斐なさを感じる。
詩音に頼まれていたのに、詞織にもケガをさせてしまった。
なんで、俺はこんなに弱いんだ。
「ねぇ……メグ……」
そっと手に触れてきた詞織に、伏黒は視線だけ向けて続きを促す。
「あのね……こんなときに言うのもどうかなって思ったんだけど……メグに謝りたくて……」
「謝る……?」
話の意図が読めず、伏黒は身体を起こした。
大きな夜色の瞳を揺らす詞織を真っ直ぐ見据える。
「わたし……さっき、垂水さんと戦ったとき、幻惑の術に嵌まっちゃって……あの人のこと、恋人だと思ってた……」
「え……?」
混乱する伏黒に、詞織も悔しそうに続けた。
「こんなこと言っても、メグを困らせるだけだって分かってる。どうせ、現実じゃないんだから、言う必要なんてないって。でも……後ろめたい気持ちを抱えたままにできなくて……」
詞織は唇を噛む。
泣きそうな顔をして、それでも涙をグッと堪えているようだった。
「ごめんなさい……自己満足だって分かってるんだけど……どうしても……」
伏黒は詞織の頬に手を伸ばし、彼女の唇に口づけた。