第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「【怯えないで 私がずっと抱きしめている 何があっても揺るがない想い 信じて】!」
より強い調子で旋律が紡がれる。
「《……これは……⁉︎》」
ぶわりと真っ白な羽が不可視の壁から溢れ、呪霊の視界を奪った――瞬間。
ゴォッと轟音を立てて不可視の壁が突風を羽と共に巻き上げる。同時に呪霊の身体が弾け飛び、屋根瓦を粉々に打ち砕いた。
「はぁ……っ、はぁ……あッ……」
ゲホッと詞織が血を吐き出す。
「詞織!」
ガクッと膝を折った詞織に駆け寄り、その小さな身体を抱き上げる。唇を真っ赤に染め、少女は力なく瞼を閉じていた。
狗巻と同じ……喉が潰れたのか。意識がない。
「詞織! 詞織、しっかりしろ!」
詞織の攻撃で吹き飛ばされた呪霊は、まだ起き上がる気配はない。
グッと奥歯を噛み締め、伏黒は叫んだ。
「……詩音! 起きろ! 詞織が大事なら!」
詩音の力を解放したため、縛りの関係で、あと十時間は呼べないと詞織は言っていた。
けれど、だから何だという話だ。
詩音なら詞織を助けることができる。
縛りが何だ。詩音ならばそんなもの、詞織のために振り切ってくる。
「詩音!」
何度目になるのか、名前を呼ぶ。すると、ようやく詞織が震える瞼を持ち上げた。その瞳は、血のように赤い。
『うるさいわね……気安く名前を呼ばないで……』
ゲホッと血を吐きながら、詩音は青い顔で喉を押さえた。