• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第19章 それぞれの想いが奏でるカノン【京都姉妹校交流会―団体戦―】


「本人も隠してるわけじゃないから話すけど……真希は呪力を持っていないんだ。だから、本来だったら呪霊も見えないし祓えない。それを補うために、呪霊が見えるようになる眼鏡を掛けて、祓うときは元々呪力を持つ呪具を使っている。禪院家にとっては呪力を持たない人間なんて恥以外の何ものでもないからね。京都校にいる真希の双子の妹 真依は多少でも呪力があるからか三級まで上げているけど、真希に関しては徹底している」

「そうなんですね……」

 全く悲観しているようには見えなかった。それに、画面の向こうの戦いを見る限り、呪術師として何か欠陥があるようにも思えない。

 そもそも、呪力もなく呪霊も見ないのに、なぜ呪術師になろうと思ったのだろう。
 昇級を邪魔しているということは、禪院の意向ではない。つまり、自分の意志で呪術師を志したということ。

 そんなことを考えていると、五条が乱暴に頭を撫でてきた。

「順平、他人に興味を持つのはいいことだよ。今まで他人と関わりを持とうとしなかった君にとっては特にね。気になることがあるなら聞いてみるといい。僕でも、本人でも。もちろん、僕の口から話せないことはあるし、本人たちにも話したくないことはあるだろう。触れられたくないこともある。でもね、そうやって仲間と笑ったり、泣いたり、ケンカしたり、仲直りしたり……そういうのを『青春』って言うんだ」

 ね、と笑いかけられて、順平は思わず顔を赤くする。

 そうか、これが青春なのか。
 必要ないと、自分の中で切り捨てたものだ。

 他人は他人、自分は自分。そう思って線を引いてきたけど……少しずつでも、その線を越えてみるのもいいかもしれない。みんなとなら……。

 やがて、真希が刀を取り上げたまま、三輪を置き去りにしてその場を立ち去り、森の奥へと走っていく。

「それにしてもさぁ、禪院家も、素直に手のひら返して真希を認めりゃいいのに」

「金以外の柵(しがらみ)は理解できないな」

「相変わらずの守銭奴ね」

 五条の言葉に小さく笑う冥冥へ、歌姫がげんなりとした表情でポツリと呟いた。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp