第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「アンタさぁ。伏黒のこと、ちっとも分かってないわね」
「な、なにそれ……メグとは小学生の頃から一緒にいる。野薔薇よりメグのこと知ってるもん」
「知ってたらそんなこと言わないわよ。言っておくけど、伏黒はアンタが思ってるよりずっと面倒くさい奴よ。あたしがアンタと話してるだけで、ヤキモチですんごい顔してるから」
「すんごい顔?」
いったいどんな顔をしているのだろうか。気になる。
「五条先生とか、男と話してるときはまた一段と面白いわね」
「お、面白い……?」
「そう。こんな感じで……」
真似をしているのか、釘崎は眉間をギュッと寄せて目を鋭くする。その顔は確かに面白かった。
「変な顔」
「でしょ?」
小さく吹き出すと、釘崎も歯を見せてニッと笑う。
「まぁ。どちらにしても、アンタ 相当 男の趣味悪いわね。少なくとも、あたしは伏黒なんて絶対選ばないわ。ぶっきらぼうで無愛想で不器用の三拍子揃ってるヤツ」
「じゃあ、どんな人がタイプなの?」
逆に尋ねてみると、釘崎は「そうねぇ」と顎に指を当てて考え始めた。
「まずイケメンなこと! あとは優しくて……何よりもあたしを優先してくれる人! ワガママ聞いてくれたり、欲しいもの買ってくれたり。お金持ちだと尚良し!」
イケメンなこと……つまり、カッコいい人。それに優しくて、自分を優先してくれる?
それって……。
「メグだ……!」
なんということだ。釘崎は伏黒の魅力に気づいていないだけで、彼が好みの男性のタイプだったのだ!
「の、野薔薇……メグをとっちゃイヤ……!」
「今の話をどう聞いたら伏黒に繋がるのよ! それに、選ばないって先に言ったでしょ」
「だ、だって……メグはカッコいいし、優しいし、いつも助けてくれるし……わたしのワガママ聞いてくれる」
「アンタ限定でね! アンタ以外には基本的に塩対応なのよ、アイツは!」
大きなため息を吐いた釘崎は、やがて「もういいわ」と踵を返した。