第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「アンタ、まだ何も準備してないの⁉︎」
部屋にやって来るなり呆れた表情をする釘崎に、詞織は首を傾げた。
いったい何を準備するのか。
「京都よ、京都! 明日じゃない!」
「確かに、明日から始まる交流会の相手は京都校だけど……」
「そうでしょ! 京都といえば、日本の観光名所! ステキなものもいっぱいあるわ! ちっちゃなバッグじゃ絶対足りないでしょ⁉︎」
何が足りないと言っているのだろうか。
京都校が手土産でも持って来るというのだろうか。
はっきり言って、詞織は釘崎の言っていることが全く分からなかった。
「もういいわ! 手伝ってあげるから!」
「別に……手伝ってもらわなくていい」
部屋に入って散らかされてはたまらない。
持ち物自体 それほど多くはないし、そもそも散らかるほど物を持っているとは思わないが。
話が噛み合わないことが、自分の部屋に触られることを躊躇させた。
「そ? まぁいいけど。準備不足で泣く羽目になっても知らないわよ」
「……?」
たまに釘崎の話の意味が分からないと感じることはあったが、今日はまた一段と理解不能だ。
不意に、釘崎が「ところで」と話題を変えてきた。
「詞織。アンタ、伏黒とうまくいってる?」
「うまく?」
何をどう『うまく』と表現するのか分からないのだが。
「特別なことは何もないし……うまくいってるんじゃない? それとも、メグから何か聞いた?」
逆に問いを返してきた詞織に、今度は釘崎が首を傾げた。
「何かって?」
「わたし、愛想ないし、面白いことも言えないし……野薔薇も真希さんも、わたしより可愛いし美人だから……心変わりしちゃうかもって……」
すると、釘崎は口を開け、「はぁ?」と大きな声を出す。