第16章 これから目指すファンタジア【成長/我儘】
唐突に、真人の左肩から斜めに斬りつけられたような傷が走り、血が弾けた。
黒いドームが消え、校舎とグラウンドの景色が戻る。
目の前で、グシャリと真人が膝を折った。
「何が起こったんだ……?」
虎杖の頭は混乱していた。ほんの一瞬の自失。
星也に突き飛ばされたおかげで、真人が展開した黒いドームに囚われずに済んだが、星也が巻き込まれてしまった。
その黒いドームを叩き続け、ようやく中に入ることができたのだ。だが、真人を捉えた瞬間――そのほんの一瞬の記憶が抜けていた。
いや、そんなことはどうでもいい。
五条に習った――先ほどの黒いドームは領域展開というものだろう。
その証拠に、真人の呪力は尽きかけているようだ。
さらに、どういう理屈か分からないが、かなりの重傷を負っている。
こちらには特級呪術師の星也がいて、自分もまだ戦える。
――"殺す"‼
その言葉が頭に過ったときには、すでに虎杖は走り出していた。
なけなしの呪力を振り絞ったのか、真人の身体が膨張する。そのサイズは校舎よりも大きい。
だが、こちらとしては好都合だ。
相手の呪力は凪いでおり、カウンターの心配もない。
的が大きい分、攻撃も確実に当てられる。
これは最後のチャンスだ。駆け引きもいらない。
虎杖はありったけの呪力を纏わせ、拳を繰り出した。
――【逕庭拳(けいていけん)】!
パンッと風船が破裂する音が校庭に響き、真人が破裂する。同時に、虎杖は目を見開いた。
驚くほど手ごたえがなかったのだ。
後ろで星也が動く気配がする。
駆け出した星也の先に、人の形すら保てないのか、小さな異形の姿をした真人がいた。