第16章 これから目指すファンタジア【成長/我儘】
――バチッ!
暗闇に閃光が弾ける。
チャリン…と金属音を鳴らして何かが落ちた。
『……お前……』
真人が驚いているが、星也自身も驚いていた。
何が起きたのか理解できていない。
首元で千切れた“何か”を探し、足元に落ちたものを拾う。星良に渡されたロケットペンダントだ。
鎖が千切れ、開いたペンダントの中身が溢れている。中に入っていたのは紙だ。
小さく何重にも折り畳まれた紙を開き、星也は息を詰めた。
――「お守り。星也には誰もついててあげられないから。中は開けちゃダメよ?」
朗らかに笑う双子の姉の姿が過ぎる。
「…………ありがとう……“星良ちゃん”…………」
――……【星也護形】。
片隅には小さく、『死にたがりの弟へ』と刻まれていた。
繊細ながらもしっかりと綴られた形のいい文字をなぞり、星也は印を結ぶ。
『死ぬ気はなくなったわけ?』
「僕には守りたい人がいる。悲しませたくない人がいる。失いたくない人がいる」
そして、それは誰もが持つ、かけがえのない人間だ。もしも、誰かのかけがえのない人間の中に自分がいるのなら……死ねない。
「足掻くことにする。最期の瞬間まで、僕は僕の命を諦めない」
裁きは受け入れよう。この命を終えた後で――……。
――【領域展開 星喰天蓋(せいしょくてんがい)】
発動した瞬間に勝利が決まるとすら言われる【領域展開】の、数少ない対抗手段。
己の【領域展開】を発動し、必中効果を中和させることができる。
力量に大きな差があれば、相手の領域を塗り潰すことも可能。より洗練された術がその場を制する。
少なくとも、完成させたばかりの領域に遅れは取らない。
呪力が練り上げられ、眩い星々を飾る天蓋が、歪つな天井を塗り替えようとした――……そのとき。
バリンッとガラスを砕くような音を伴って、外界から侵入者が現れた。