第14章 トランクィッロに募る【幼魚と逆罰】
「俺は足手まといかよ、星也さん」
星也に話を聞いた虎杖は、自分でも分かるほど、冷静に怒っていた。
彼が、単身で首謀者のところへ乗り込んだ。
自分には軽い仕事を割り振って。
どうしてそんなことをしたのか、頭では理解している。それでも、納得できるわけがない。
仲間が死にました。でも、僕はそこにいませんでした。
なぜなら、僕は子どもだからです――なんて、ゴメンだ。
けれど、星也は頑として頷くことはしなかった。
「ダメだ。分かっているだろう。敵は改造した人間を使う。どうしようもないときはあるだろう。この仕事をしている限り、いつか人を殺す選択肢しかないときが来る。どうしても助けられず、見殺しにしてしまうこともある。でも、君にとってのその最悪な場面は、今じゃない」
――「一度人を殺したら、『殺す』って選択肢が、俺の生活に入り込むと思うんだ。命の価値が曖昧になって、大切な人の価値まで分からなくなるのが、俺は怖い」
夜色の瞳が、ゴクリと息を呑む虎杖へ注がれた。理知的な瞳はさざなみ一つ立つことなく、ただ揺るがない意志を湛えている。
「分かってくれ、虎杖くん。子どもだってことは罪じゃない。僕には僕の負うべき責務があって、君には君にしかできないことがある。虎杖くん……君は引き続き、吉野 順平を監視するんだ」
星也の言葉に何も返せず、虎杖は震える拳を握りしめた。