第13章 残酷なカプリッチョ【幼魚と逆罰】
「また鬼ごっこ?」
愉快に声を弾ませる青年に、星也は答えない。
星也は頭の中で、青年を祓う手段を弾いた。
一つ、青年の呪力な尽きるまでダメージを与え続ける。だが、このやり方は現実的ではない。
二つ、封印。だが、全くの準備不足。今の段階では不可能。
三つ、全身を一撃で、粉々に砕き、再生不能なまでに叩き潰す。
二ヶ所、三ヶ所、四ヶ所、五ヶ所と、青年を取り囲むようにして柱や壁に触れる。
静止した星也に、青年は首を傾げた。
「あれ、もう諦めたの?」
「さよならの時間だ。【五行展開――急々如律令】!」
印を結び、星也は呪力を解放する。次の瞬間――青年を中心に、五芒星が光った。
「なんだ、これ⁉︎ まさか、さっきの……⁉︎」
壁や柱に触れていたのは、この術を完成させるための布石。
次いで、星也が触れた五芒星の頂点から、壁や柱に亀裂が入り、下水道が揺れ、崩れ始める。
「相打ち覚悟の攻撃なんて……正気?」
「正気だよ」
言いつつ、星也は青年の足を天枢で切り落とした。
「じゃあ、僕は一旦 退くよ。足、早く治した方がいい。お互い、生きていたらまた会おう」
瓦礫を避けながら、星也は青年に背を向けた。足を落としているから、すぐに追いかけてくることもないだろう。
少しだけ振り返ったタイミングで、青年の上に巨大な瓦礫が降り注ぐのが見えた。