第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
あの雨の日の少年刑務所の一件から一ヶ月――虎杖は伏黒たちや高専上層部に生存していることを隠し、五条の下で"最強"を学んでいた。
呪力とは何か、術式とは何か。
呪力を制御するために、スプラッタやゾンビ映画を見ながら呪骸に呪力を流す作業をこなしていく。
五条の説明は、素人である自分にも分かりやすく、課外授業と称して特級呪霊と相対したときも、領域展開なるものを見せてもらった。
五条 悟は最強――それは決して自己評価でも過大評価でも、誇張でもなんでもない。紛れもない事実であると、この一ヶ月で虎杖は身を以って知ったのだった。
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「凄惨な現場だよ。覚悟はいいかい、虎杖くん」
隣に立つのは、最強の呪術師 五条 悟ではなく、詞織の兄である神ノ原 星也。
こじんまりとした映画館の入口で、虎杖は深く息を吸い込み、挑むようにして正面を見据えた。
――数時間前。
「今回、僕は引率できなくてね。でも、安心して。信用できる教え子を呼んだから。僕と同じ特級呪術師で、詞織のお兄ちゃんの神ノ原 星也くんでーす!」
「五条先生に『同じ特級』と言われると、どうにも皮肉に聞こえてしまいますが」
「別に皮肉ってないって! 事実じゃん。まぁ、僕の方が強いのも事実だけど」
詞織と同じであまり表情が変わらないらしい。非難めいた言葉を発するものの、そこに嫌がるような印象は受けなかった。