第10章 雨だれのフィナーレ【呪胎戴天/雨後】
「野薔薇は初めて会うよね。高専の二年生」
詞織の説明に続けるように、伏黒は一人一人紹介する。
眼鏡を掛けたポニーテールの少女は、禪院 真希。
呪具の扱いは学生一だ。
次に、口元を隠した小柄な少年は、呪言師の狗巻 棘。
語彙がおにぎりの具しかない。
あと、パンダ。
二年にはもう一人。
伏黒が唯一 手放しで尊敬できると思っている、乙骨 憂太という先輩がいるが、残念なことに現在は海外出張中である。
「アンタ……パンダをパンダで済ませるつもりか?」
「あの人(?)は見たままが全てだ」
「パンダくんはすっごく優しくて力持ち」
詞織のフォローが入るが、まだパンダの存在が消化しきれないのか。釘崎は微妙な表情だ。
そのパンダのつぶらな瞳と目が合うと、彼(?)が巨体を揺らしながら前に立ち、両手を合わせた。
「いやー、スマンな、喪中に。許して」
そう言って、パンダは本題に入るためか、「コホン」と咳払いをして空気を切り替える。
「実は、オマエたちに京都姉妹校交流会に出てほしくてな」
パンダの頼みに、釘崎が「京都姉妹校交流会?」と首を傾げた。
「京都にある呪術高専との交流会」
詞織が釘崎に耳打ちする。だが、この交流会は二年と三年がメインのイベントのはずだ。
伏黒がそのことを指摘すると、真希はギュッと眉間にシワを寄せた。
「その三年のボンクラが停学中なんだ。乙骨も海外に行ってるし……出場する人数が合わねぇ。だから、オマエら出ろ」
なるほど、と伏黒は内心で相槌を打つ。
「交流会って何するの?」
「東京校、京都校。それぞれの学長が提案した勝負法を一日ずつ、二日間かけて行う」
釘崎の問いにパンダが意気揚々と答えた。
しかし、それは建て前で、初日が団体戦、二日目が個人戦と、毎年 決まっているのだと彼は続ける。
そんなパンダに、狗巻が「しゃけ」と相槌を打った。