第10章 雨だれのフィナーレ【呪胎戴天/雨後】
ザァザァ……と雨が地面を叩く音が聞こえる。半分だけ覚醒した詞織の意識が、誰かと誰かが戦う音を拾った。
不意に、ピリピリと空気が震える。
慣れた気配……伏黒の呪力だ。
『……いいぞ。命を燃やすのはこれからだったわけだ!』
これは、伏黒の声ではない。虎杖の声?
いや、違う。一度だけ聞いた。両面宿儺だ。
段々と、意識がはっきりしてくる。
ようやく重い瞼を持ち上げ、身体を起こした。
肺を満たす湿った空気。身体を叩く細かな雨に鬱陶しさを感じ、立ち上がろうと足に力を込めた。
「……ぅ……!」
足が動かない。挫いたのか?
詞織は必死で記憶を辿った。特級呪霊の攻撃を受けてからの記憶がない。
生きているということは、詩音が特級呪霊を倒してくれたのか?
だが、目の前で繰り広げられているのは、伏黒と両面宿儺の戦い。
詩音では力及ばず、引き返してきた虎杖が宿儺と代わって呪霊を倒した。
その方が辻褄も合う。それに、詞織には詩音の縛りを解いた記憶もない。
自分のせいだ……唇を噛めば、すでにかさぶたになっていた傷が血を流す。
いや、自分を責めるのは後だ。早く、伏黒に加勢しなくては。
そう考えて、詞織は目を凝らした。そして、瞠目する。