第7章 ジョコーソに更ける夜
「オイ、伏黒。本当か⁉︎」
「すごい食いつき方だな……」
釘崎の気迫に引き気味の虎杖。伏黒もあまり刺激したくなくて、「まぁ……聞いたことあるけど」と短く返す以上のことはしなかった。
「本人も言ってる。『グッドルッキングガイ・五条 悟』って」
キリッと五条のモノマネをする詞織に、ジュースを飲んでいた虎杖と釘崎が揃って吹き出した。
「きたねー。お前ら、ちゃんと拭けよ」
呆れ顔で布巾を渡してやれば、二人は震えた手で受け取り、口を開く。
「激似……詞織にこんな特技があったとは……」
「油断してたわ」
声帯模写は詞織の十八番だ。
女性はもちろん、男性、子どもから老人まで真似できる。
「なぁなぁ、伏黒の声も真似できんの?」
「やらせんな」
虎杖のリクエストに、詞織は「できる」と言って軽く咳払いをした。
「『玉犬』!」
やめろ!
そんな伏黒の心中とは裏腹に、虎杖と釘崎は「「似てるー!」」と大いに盛り上がった。
「じゃあじゃあ、竹内●真のビュ●ネのCM! アレやって!」
「誰か分からない」
「何で知らないのよ!」
釘崎のブーイングを無表情で受け流す詞織へ、虎杖が呼びつける。
「高橋●樹の●太郎侍は?」
「できる」
「なんでそっちは知ってんのよー!」
リクエストに応じて、詞織が渋い声を出す。
いったい、少女の声帯はどうなっているのか。この特技を披露するたびに疑問が生まれる。
こうして夜中まで騒ぎに騒ぎ、翌日の授業は四人揃って遅刻した。