第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
「どうした、裏梅?」
「なんだ……【反転術式】で肉体は再生させた……これは……毒か!」
脂汗を流しながら、裏梅はガクガクと震えていた。
「【穿血】で俺の血が混じったんだ。当然だ」
そのとき、八十八橋で戦った脹相の弟――壊相と血塗だ。あの二人は触れた者を溶解させる効果を持っていた。
「待って……真依ちゃんの援護がない。あっちにもまだ仲間がいるのかも」
箒を支えに、桃が震えながら身を起こす。
「葵と銃の子、あとスーツの子はアタシの仲間が保護しているよ。場違いだからね」
そこへ、パキキ…と音を立て、小さな羽をいくつも持った、鳥の脊椎骨が連なったような外観の式神が現れた。
「加茂、垂水。動けるか?」
パンダに問われ、加茂が「あぁ」と頷く。
「私は体温を調整できる。問題ない」
「ボクは無理。右腕が動かない……でも、舐められっぱなしは癪だからね。式神で援護くらいならしてあげてもいいよ」
水の輪がうねるように渦巻き、攻撃に備えた。その傍らでは、「俺はもういいや」と日下部が大の字になって空を仰いでいる。
そこへ、夏油が「まだ話の途中だよ」と続けた。
「私が配った呪物は、千年前からコツコツ契約した術師たちのなれの果てだ。だが、私と契約を交わしたのは術師だけじゃない。まぁ、そっちの契約は この肉体を手にしたときに破棄したけどね」
不穏な気配が広がり、九十九が「まさか!」と息を呑む。
「――これが、これからの世界だよ」
夏油の影から無数の呪霊が飛び出した。十体やニ十体ではない。おびただしい量、数えるのも気が遠くなりそうなほどの数だ。
虎杖と脹相、そして パンダ、加茂、垂水、桃たちがその光景に息を呑み、日下部が深々とため息を吐く。
そして、無数の呪霊の陰の奥に移動しながら、夏油は【獄門彊】を見せつけた。
「じゃあね、虎杖 悠仁」
「あれは【獄門彊】⁉ 五条先生‼」
虎杖が叫んで手を伸ばすも、その手が届かない。
「君には期待しているよ」
――聞いているかい、宿儺。
始まるよ。再び――呪術全盛、平安の世が……!
* * *