第56章 この手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
――「あたしの人生の席……っていうか、そこに座ってない人間に、あたしの心をどうこうされたくないのよね」
自分の周りにはたくさんの席がある。自分が認めた者しか座らせない、人生の席。
そこには虎杖が座っていて、伏黒も、詞織も、順平も、五条も座っていた。他にも、真希、狗巻、パンダ……『いい』と許可したわけではないのに、いつの間にか埋まっていた席。
いつの間にか、彼らは心の中の線引きの内側にいた。
――あたしの住んでいた村の連中は、全員 頭がおかしい。
そんなことはない。尊敬している『沙織ちゃん』以外に仲の良い友達は一人いたし、『次に会うときは三人で』と約束も交わしたくらいだ。
でも、おかしい奴の声は大きくて、自分以外の全てに思えて、土足で他人の人生を踏みにじるものだと思っていた。
「……ってわけでもなかったかなぁ」
振り返れば、その仲の良かった友達――ふみ が泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「ゴメンね、ふみ。約束 守れなくて」
・
・
・
虎杖と背中を合わせて戦ったこと、順平を悪ふざけに巻き込んで伏黒に呆れられたこと、詞織や真希たちと女子会をして楽しんだこと……。
良いこともあった。
悪いこともあった。
楽しいこと、キツイこと……たくさんあった。
「釘崎!」
「釘崎さん!」
泣きそうな顔……というか、順平は泣いているな。直前で突き飛ばしたから、『自分のせい』とか余計なことを考えているのかもしれない。
そんな順平を押しのけ、釘崎は顔を上げる。
「二人とも、皆に伝えて」
最期に泣き顔なんて、自分には似合わない。
だから、釘崎はニッと口角を持ち上げた。
――“悪くなかった”!
ズズッと左側の顔が歪む。そして バシュッと弾け、そのまま釘崎の意識は途絶えた。
* * *