第55章 永久を願うコン・アモーレ【渋谷事変】
「……それは、あたしを試してるんですか?」
「そんなつもりはありません。私はただ……」
星良は遮るように深いため息を吐き、七海の焼けた左頬に触れる。
「……七海さん、あたしのこと舐めてるでしょ」
「……は……?」
「あたしは十年以上かけてあなたを振り向かせたんです。その努力を無駄にしろって言うんですか?」
目を瞬かせる七海の瞳に戸惑いの色が窺えた。
確かに、自分は七海に一目惚れした。一目惚れなんて、その瞬間に惹かれたのは間違いなく容姿だ。けれど、今はもうそれだけではない。
何もかもキッチリしていないと気が済まなくて、どこか皮肉屋なところがあって、大人らしいズルいところもあって、少し後ろ向きになってしまうところも、脆いところも……好きなところなんて、容姿以外にもいくらだってあげられる。
「ねぇ、七海さん。この傷は、あなたが人を守るために戦った証ですよ。その傷を理由に、あたしを手放すなんて言わないで……」
自分は七海の傍にいられればそれだけで幸せだ。それも分からない周囲の者たちなど、好きにさせておけばいい。
もし七海が周りの視線を不快に感じるのならば、そんなことが気にならないくらい自分を意識させてみせる。
七海の傷に口づけをいくつも落としていると、彼の左の手のひらがぎこちなく頬に触れた。それにも唇を寄せると、彼は少し身を起こす。
触れそうな唇が触れなかったのは、躊躇ったのだろう。星良は自ら彼の唇を受け入れた。顔を離すと、七海が少し悲しそうに瞳を揺らす。