第55章 永久を願うコン・アモーレ【渋谷事変】
閑散とした渋谷駅の構内を、七海は身体を引きずるようにして歩いていた。
突然 現れた火山頭の呪霊に身体を燃やされ、特に炎の直撃を受けた左半身は感覚が鈍くなっている。
七海はほとんど本能に近い意識で、地下五階を目指していた。やがて、階段を下りた先で、大量の改造人間が壁を作っている。それを見て、深く息を吐き出した。
「マレーシア……そうだな……新居はマレーシア……クアンタンがいい……」
何でもない海辺に家を建てよう。買うだけ買って手をつけていない本も山ほどある。それを読む傍らで愛しい人の温もりを感じながら……海外に新居を建てたいなどと言ったら、星良は驚くだろうか。
いや、違う。伏黒と詞織を助けに行かなければ。
真希や直毘人も……二人は無事なのか?
もう、自分が何をやっているのかさえ、分からなくなってきていた。
……疲れた……疲れたな……。
そう、疲れたんだ……もう充分やったさ……。
壁を作る改造人間たちに迫り、無心で鉈を振るう。
無性に、灰原と星良に会いたかった。
灰原のうるさいほどの声で語られる純粋な理想が聞きたかった。
星良に「頑張りましたね」と優しく抱きしめてもらいたかった。
そうしないと、もう戦えないところまで来ていた。
改造人間を殺しきり、荒く呼吸を繰り返していると、トンッと何かがぶつかる。気がつけば、ツギハギ顔の呪霊が目の前に立ち、七海の胸に触れていた。
人間の魂の形を変え、改造して操るツギハギ顔の特級呪霊。敵にそんな呪霊がいることは聞いている。数ヶ月前、星也と虎杖が戦った相手だ。