第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
――23:19
道玄坂 SHIBUYA109前
星也たちを拠点に届けた宿儺は、再び109前に戻ってきた。虎杖の目覚めはすぐだ。震える手に口角を上げる。
『――小僧。せいぜい噛み締めろ』
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顔や身体から紋様が消え、虎杖はようやく宿儺から意識を奪い返した。そして、目の前の更地の景色に言葉を失くす。
ポツンと、その更地で縦に両断された男の死体を見つけた。
脳裏に身に覚えのない記憶が蘇る。
宿儺の術式に刻まれ、塵となっていく人々や街並み。
血を撒き散らし、細切れにされた姉妹。
日下部やパンダも宿儺と特級の戦いに巻き込まれ――……。
――俺がやったことじゃない。
違う。自分が【宿儺の指】を食ったせいだ。
自分が宿儺に意識を奪われたせいだ。
――こんなの……俺がやったことと変わらない……っ!
生々しい記憶の数々に膝を折り、虎杖は唸るように呻き、込み上げてくるものを嘔吐した。
――「なんで俺が死刑なんだって思ってるよ」
なんで?
よくそんなことが言えたよ。
それだけの存在だ。
【呪いの王】の意味をまるで分かっていなかった。
宿儺は宿儺で、俺は俺だ、なんて――そんな簡単な話ではない。
自分の甘さと理解の低さのツケが――この事態を招いたんだ。
「――死ねよ」
泣く資格なんてないと分かっていても、溢れる涙を止めることはできなかった。
――自分だけが生きている。
あれだけ大勢の命を危険に晒して。
これだけ大勢の命を奪っておいて。
――自分が! 自分だけが‼
「死ねよ! すぐに死ねよ‼ 今ッ! ここで死ねよ――ッ‼」
更地になった地面を掻きむしりながら、【呪い】をかけるように自分に繰り返す。