第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
『これより四方一町(いっちょう)の人間全員、俺が「よし」と言うまで動くのを禁ずる』
――禁を破れば、もちろん殺す。
イタドリく〜ん? とか細い声を出すパンダだったが、日下部は一言も発することができなかった。
『ケヒッ、ヒヒッ! まだだぞ』
おいおい。もうすぐそこまで来てるだろ。
コイツ、自分たちを殺すつもりか?
いや、違う。殺す殺さないなどと考えているわけではない。
宿儺にとっては、これすらも余興。ただの遊び。
『まだ。まだまだ』
背中に熱気を感じる。微かに視線だけを背後に向ければ、それだけで目玉が焼けそうなほどに迫っていた。
『よしっ!』
宿儺が手を叩く。それと同時に日下部はパンダとその場を離れた。どこに逃げるかなど考えている暇などない。
呪力をありったけ足に集中させ、死に物狂いで、『ただ遠くに』とそれだけを考えて足を動かした。
* * *