第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
「私たちは夏油様の遺志を継ぐ者。高専関係者なら、それ以上 語る必要はないでしょ? 投降するの? しないの? ハッキリしない男は嫌いよ」
「俺、パンダだから関係ない」
パンダでもオマエも術師だろうが。
どうやら、話は終わりらしい。
短すぎだ、バカヤロー。
戦わずに時間を稼ぎたかったが……まぁ、いい。
このレベルの集団だろ?
周りは囲まれているが、気配からして逃げようと思えば逃げられる。
旨い。旨すぎる。
時間いっぱい適当にいなして、特級呪霊の相手はせず、のらりくらりといこう。
口に咥えていたキャンディーの棒を吐き捨てて両膝をつき、日下部は納刀した刀を横に構えた。
「【シン・陰流 居合――『夕月』】」
交渉決裂を悟ったのか。男が手を上げて周りの仲間に合図を送る。その挙動を、日下部は注意深く見て、タイミングを測っていた。
その手が振り下ろされる――瞬間、男の背後のビルが周りのビル群を巻き込みながら轟音を立てて爆発した。同時にゲラゲラと愉しそうな笑い声を上げ、瓦礫を踏み台に誰かが出てくる。
「なんだ⁉︎」
「あぁっ⁉︎」
ビルから二人 飛び出してくる。片方は人ではない。おそらく呪霊。もう一人は赤いパーカーを下に着込んだ高専の制服。
あれは……虎杖⁉︎
いや、この気配にこの気迫――宿儺か⁉︎
『そんなものか⁉︎ 呪霊‼︎』
炎を放とうとした呪霊の腕を斬り刻み、宿儺が身体をしならせてビルの屋上へ叩きつけた。その衝撃はビルを貫き、地面が大きく揺れる。
見たところ、宿儺が戦っている呪霊はめちゃくちゃ強い。あれを単独で祓えるなんて、五条くらいだろう。乙骨や星也も苦戦は免れない。
それを宿儺は、まるで子どもを相手にするように戦いを遊んでいる。