第1章 始まり
樹戸さんは学校の正門近くで降ろしてくれた。
「学校頑張ってね」
『…はい、ありがとうございました』
お礼を言う。
「じゃあ」
と言って樹戸さんは手を振った。私もつられて手を振る。
離れていく車を見送る。
『あ…』
学校に着いてから、ふと思い出した。
今日から1週間私、週番だ。
でもひとりじゃないからマシかな。
一緒にするのは誰か分からない。
とりあえず頑張ろう、と思いながら靴箱に向かった。
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教室に入って、自分の席に座る。
鞄から教科書を取って、ゴソゴソと引き出しに入れる。
私の席にある人が立ち止まって声をかけられて顔を上げた。
「さん」
声をかけたのは、藤ヶ崎春樹(ふじがさき はるき)くんだった。
藤ヶ崎くんは学年一で頭がいい。名前は素敵だし、顔も素敵。それに性格だって。
だから彼は、女子からものすごくモテている。
「週番一緒だよね」
『えっ?、あ、うん……』
藤ヶ崎くんに言われるまで、一緒かどうか知らなかった。
『(そうなんだ、藤ヶ崎くんと一緒なんだ。なんか緊張する…)』
ぼんやりと考える。
「僕が日誌書くから、さんは窓の戸締まりをお願い」
『と、戸締りだけ?他もするよ、黒板の掃除とか』
「黒板の掃除するとチョークの粉が飛ぶけど、いいの……?」
たしかに粉が制服に付くのは嫌だけど、週番だしちゃんと仕事しないと。
『あんまり気にしないから、大丈夫……』
「分かった。あ、週番の引き継ぎは僕がいくよ」
『あ、ありがとう』
週番の引き継ぎ。
先週の週番と今週の週番が全クラス集まって反省するやつ、面倒だから行きたくない。
でも、ほとんどの仕事全部藤ヶ崎くんに任せていいのかな、と少し不安になった。