第5章 過去の話と幸せな一時
『そんな反応すんじゃねえよ…襲っちまうぞ?』
からかうつもりで桜雪の顎をグイッと自分の方に向かせた宇髄は言った。
ーペシッ…
『触んな…くそが…』
桜雪は宇髄の手をはらって睨みつけながら言った。
『ったくよ~俺には優しくしてくれねぇんだよな〜お前はっ!!』
『優しくしてるだろうが。どうでもいい奴となんで飲みに行かなきゃなんねぇんだ?』
『それは優しくとは言わねぇよ。』
『ふーん。どうでもいい。』
『お前なぁ……』
桜雪の態度と返答に宇髄は呆れつつ、いつもの桜雪だなと思った。
しかし、心配でもあった。
桜雪はツンツンしているが、基本的には優しい。
たまに鬼に情をかけてしまうことだってある。
その時…実弥がどう反応するのか。
桜雪を突き放してしまわないか…
そんな心配が頭をよぎるのだ。
宇髄も桜雪も…
こんな日々がずっと続くと思っていた。
実弥の話をして宇髄にからかわれ…
ずっと実弥の傍にいるんだと桜雪は思っていた
それが全て崩れてしまう出来事がこの先に待ち受けることを今の桜雪はまだ知らない。