第10章 オダマキ
『....そっか....。それじゃあ未熟者同士、励まし合ってこれからも頑張ろう?でもね、悠仁はいつも頑張ってるんだよ!いーこっ!』
“いーこ、いーこ”と言いながらまるで幼い子どもを慰めるように俺の頭を撫でる。
「..........っ、桃花....っ。」
ソファーに座る俺の目の前に立っている桃花の細い腰に両腕を回して引き寄せ抱き締めた。
『はわゎっ!?悠仁...?』
「.........順平.........遠くに引っ越しちまったんだって...........。」
順平の死を桃花は知らない。
それを知ってしまえば、また桃花の精神的負担に繋がることを懸念してナナミンからそういうことにするようにと言われていた。
『....そうだったんだ....。それは淋しくなるね...。いつかまた、皆んなで映画観られると良いね。』
「.....ん...。」
桃花の身体に顔を埋めて泣きそうになるのを堪える。
『.......痛いね.......。』
俺の背中をゆっくりとさすりながら優しい声が降ってくる。
うん、いてー。
順平に殴られてついた頬の傷は治っても、心の痛みはずっと残ったまま。
それをまるで分かっているかのように、傷を癒すように俺の身体を優しく撫で続ける。
不思議。
やっぱり俺、桃花と居るとすげー落ち着くんだ。
桃花を抱き上げて俺の膝へと向かい合うようにして座らせ、再びぎゅっと抱き締めた。
『はわっ!?』
「........桃花ごめん.......もう少し......もう少しだけこのまま.....。」
『.....うん。大丈夫。...大丈夫だよ...。』
正しい生き様なんて分かりゃしない
ならせめて分かるまで、アイツを殺すまで
もう俺は負けない。
そう誓うよ。