第10章 オダマキ
自身の最期にこんなに穏やかな気持ちで居られるだなんて思ってもいなかった。
そんな穏やかな気持ちを領域を外側から壊す音が崩していく。
領域外側を拳で壊し、虎杖君が自ら内へと入って来た。
結界術は内からの耐性を上げる程、外からの力に弱くなる。
“領域”は“閉じ込める”ことに特化した結界。
逆に侵入することは容易い。
何故なら侵入者にメリットがない。
“無量空処”や“ 自閉円頓裹”のように相手を領域に引き入れた時点で勝ちが確定するとなれば尚更。
だが、虎杖悠仁の裡には
触れてはいけない“魂(モノ)”がある。
虎杖悠仁の魂、すなわち“両面宿儺”の存在には触れてはならない。
【話を聞いていればオマエ、俺の姫君に手を出したようだな。生きていられると思うなよ。今すぐ、死ね。】
「「!!」」
虎杖君の中の両面宿儺がつぎはぎ呪霊へと重い罰を下す。
天上天下
唯我独尊
己の快・不快のみが生きる指針。
両面宿儺、彼にとって私が死のうと、つぎはぎ呪霊が死のうと、どうでもいい。
唯一の好奇はただ一人。
“桜眼の姫君”
それ以外は心底どうでもいい。
両面宿儺の魂に触れてしまったことにより、呪霊の結界が解かれて領域から解放される。
と、同時に膝から崩れ落ちる呪霊。
今が仕留める最大の好機。
一瞬何が起こったのか把握出来ていない様子の虎杖君でしたが、すぐに呪力消費が激しく動けずにいるつぎはぎ呪霊目掛けて駆け出して行く。