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呪術廻戦 -桜色の瞳-

第10章 オダマキ




領域展開。

呪力で構築した生得領域内で必殺の術式を“必中”必殺へと昇華する。
私の到達できなかった呪術の極致。
恐らく奴の魂に干渉する術式は“原型”の掌で触れることが発動条件。
しかしそれが必中の領域内となれば私は今


文字通り掌の上。


呪術師はクソだ。
他人のために命を投げ出す覚悟を
時に仲間に強要しなければならない。


だから辞めた。
というより逃げた。



一度高専を辞めて証券会社へと勤めた。
自分は“やり甲斐”とか“生き甲斐”なんてものとは無縁の人間。
3、40歳までに適当に稼いであとは物価の安い国でフラフラと人生を謳歌する。
そう考えていた。

高専を出て4年。
寝ても醒めても金のことだけを考えている。
呪いも他人も金さえあれば無縁でいられる。
金 金 金 金 金.....。

「大丈夫ですか?ちゃんと寝れてます?」

近所のコンビニで気に入っていたパンが売らなくなってしまい、会社の近くのパン屋へと通うようになった。
いつも決まってカスクートを買うものだからか、いつも居る店員の女性に顔を覚えられ会計時には二、三会話をするようになっていた。

「...貴女こそ疲れが溜まっているように見えますが。」

「あ、分かっちゃいました?最近なんか肩が重いというか、眠りも浅いし...。」

このパン屋に初めて来た時から、彼女の肩に蠅頭がついていることには気が付いていた。
蠅頭であれば放っていても問題はない。
下手に処理してヘンテコ霊媒師と思われても面倒だと思い、しばらくの間見て見ぬフリをし続けていた。

私はもう、呪術師ではない。
呪いなんてものは私には関係はない。

だけれど。

「私の仕事はお金持ちの人からお金を預かってその人をよりお金持ちにする、大体こんな感じです。正直私がいなくても誰も困りません。パン屋がないとパンを食べたい人が困りますよね。」

今の仕事は“私でなければならない”仕事ではない。

「でも何故かそういう人間のサイクルから外れた私の様な仕事の方が金払いが良かったりする。冷静に考えるとおかしな話ですよね。」

「じ、自慢...!!」

「違います。」

私が言いたいのはそういうことではないのです。

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