第15章 無限列車の後
『っ!杏寿郎様!』
愛は確信に近いものを持ちながら、杏寿郎の元へと駆け寄った。
そこにはうっすらと目を開けた杏寿郎がいた。
『あぁ、あぁ…杏寿郎、様』
杏寿郎のそばで膝から崩れ落ちながら、泣き声をあげる愛。
杏寿郎が目配せする。
「あぁ…お水ですね。待ってください」
そばにあった水差しで湯呑みに水を注ぎ、ゆっくりと口元へ持っていく。
「愛…待たせたな。帰ってきたぞ」
杏寿郎は掠れた声ながら、優しく笑った。
『はいっ!…はい…杏寿郎様!』
愛は泣きながらも笑顔を覗かせる。
久々に笑ったような気がした。
通りがかったアオイは杏寿郎が起きているのに、気づき慌てて他の者に伝えに走った。
しばらくすると皆が駆けつけ、病室は人でいっぱいになった。
みんな、杏寿郎の帰りを待っていたのだ。
「煉獄、待ちくたびれたぞ」
「兄上〜」
「ま、俺は信じてたけどな〜」
皆が口々に杏寿郎へと話しかける。
「うむ!ただいま、だ!」
杏寿郎は目を覚ました。
みんなの元へ帰ってきた。
よかった
大切な人を守ることができた
よかった
貴方を死なせずに済んだのだ