第15章 無限列車の後
「あ、そうそう。俺、煉獄さんと愛がいる時の匂い、好きなんだ。信頼しあってて、優しくて、互いを大事に思い合ってる匂い。たまに、甘い匂いもする。…だから、煉獄さんは大丈夫だよ」
そう言い残して、炭治郎は部屋を後にした。
『ふふ…炭治郎は、優しいーなぁ』
包帯だらけの腕を眺めて、そのままベッドにゆっくりと倒れ込んだ。
愛はあの日のことをよく考える。
そして、自問自答を繰り返す。
あの選択で良かったのか
あのとき間違ったのか
もっと良い方法があったのか
ぐるぐると頭を後悔が巡る。
このまま何も変えられず、終わってしまうのか
『…はぁ、わたし何やってたんだろ』
愛は一つため息をついて、目を瞑った。
一方、杏寿郎は…
今も懸命な治療が行われていた。
予断を許さない状況が続いていた。
それでも、何とか命の灯火を絶やさないでいる。
後は、杏寿郎の力と運次第、といったところである。
人間は、潰れた目も内臓も再生しない。
だからこそ、儚く美しい。
だからこそ、人間は素晴らしい。
失ったものはもう元には戻らない。
それを糧にどんなに情けなくとも生きていかなければならない。
それが、命あるものの使命だからだ。
…でも、貴方のいない世界では
…生きていくことが、辛い