第14章 無限列車
ぱちっ
愛は目を覚ました。
『いたっ…あれ?ここどこ?あれ?何…わたし?』
目が覚めるとそこは知らない天井で、わたしはきれいなベッドで寝かされていた。
消毒薬の匂いがしたので、ここは病院かどこかだということがわかった。
そして、背中が痛くて動かせない。
あと、頭もガンガンする。
ガラガラと戸が開くと、そこにはお母さんがいた。
「愛!!」
わたしの元に駆け寄ると、お母さんはポロポロと泣き始めた。
「駅のっ!…階段から落ちたのよ。頭を打ったみたいで…」
わたしは長い間目を覚さなかったようだ。
頭と背中を打ったこと以外は特に問題がなく、意識だけが戻らなかった。
そっか…そっちが夢だったんだ
なんだ…そっか
『お母さんっ…ただいま』
わたしは久しぶりに母の胸の暖かさに触れた。
とても安心できる匂いだった。
特にほかに症状もなく、しばらくすると体の痛みもひき、退院した。
家へ帰る。
随分と久々な気がした。
友人の美琴との連絡を取った。
随分と心配をかけていたようだった。
2回目の無限列車の映画を観に行こうって話になった。
少しぼんやりと覚えている。
杏寿郎様と話したこと。
杏寿郎様の継子だったこと。
たくさん鍛錬を重ねたこと。
…あれ?何で?
何でわたしあんなに頑張ってたんだっけ?
あれ?無限…列車?
映画の話だよね。
夢とごっちゃになってる?
考えても仕方ないことは考えない。
…あれ?
同じようなこと誰か言ってた?
あぁ、似たようなセリフを映画で杏寿郎様が行ってたな。
あれ?杏寿郎様?
…煉獄さん、だよね?
久々にわたしの部屋だ。
ふかふかのベッドに寝転ぶ。
あぁー、気持ちいい。
何だか最近は布団で寝てたから、ベッドのスプリングが心地いいや。
ん?布団?
病院はベッドだったよね。
まだ、頭が混乱してるのかな。
「愛!ご飯よ」
お母さんの声だ、
わたしはのそりと起きあがった。
『今行くよー!』
わたしは部屋の一角が目に止まった。
そこには、鬼滅の刃の隊服と刀があった。
『あれ?わたしコスプレ服なんて買ったかな?』
近づくとそれは鏡だった。
しかも、鏡の中のわたしはものすごい形相でこちらを睨んでいる。
そして、隊服を着たわたしはどんどんと叩き、叫んでいる。
『起きろっ!頸を斬れ!!』