第9章 色変わりの刀
最終選別に合格し、わたしだけの日輪刀がついに手に入る。
嬉しいけれど、少し怖い。
これで炎の呼吸に適した色にならなかったら、杏寿郎様を失望させるのではないか、と思ってしまう。
杏寿郎様はおそらくそんなことにはならず、変わらず鍛えてくださるだろうとは思う。
でも、できれば期待に応えたい。
炎柱、大きな重責ではあるが、杏寿郎様の大切なものを守っていきたい。
ちりん、ちりん
と笠を深く被り、やってきた人物がいた。
ちりん、ちりん…
説明不要、鋼鐵塚である。
わー、この人がわたしの刀の担当か…
わー、炭治郎と同じじゃん
刀折ったら殺される…
愛が固まっているのをよそに、玄関先で説明をぺらぺらと始める。
誰の声も届いていないようである。
愛がおろおろしていると、奥からやってきた杏寿郎が
「どうぞ!中へ入られよ!!」
辺り一面に響く、大きなとてつもなく大きな声でやっと、みんなで中へ入った。
いよいよである。
客間に通し、愛の刀が前に置かれた。
「どうした?早く持ってみろよ」
鋼鐵塚がさぁさぁと言わんばかりに身を乗り出す。
「炎柱の継子だろ?赤!絶対、赤だな!」
鋼鐵塚が気にしていることをグサグサと遠慮なしに言ってくる。
『うう…杏寿郎様…』
緊張した面持ちで思わず、杏寿郎の方を見る。
「うむ」
腕組みをしながら、俺は信じてるぞ。という目で見られては、刀を取るより他なかった。
色が変わるならまだしも、最悪変わらないということもあるんだったな。
そうなったら、どうしよ。
杏寿郎様をお守りするどころではない。
でも、でも…
いや、厳しいと言われる炎柱の鍛錬に今まで耐え抜いてきた。
杏寿郎様がわたしを信じてくださるように、わたしもわたし自身を信じよう。
『すぅ…はぁ…』
深呼吸をひとつ。
かちゃり、思ったよりも重い刀を持つ。
ぐっと力を入れ、刀を引き抜き、縦に持つ。
『…ん?…ん!』
しばらくは反応がなかったが、ズズズっと下からジワジワと色が変わってきた。