第4章 継子として
そして、帰路に着く愛。
送り届けてもらい、再度お礼を伝えて、岸本は帰っていった。
「おかえりなさい。愛さん。わぁ、新しいお着物ですか?」
千寿郎が出迎えてくれる。
手に持った着物に目を向ける。
『ただいま。杏寿郎様が買ってくださったの。』
「素敵です!」
わいわいとおしゃべりしながら、夕餉をとる。
杏寿郎様がいない夜。
ううん、しっかりしないと。
こんな日はこれからもたくさんある。
早く鬼殺隊員になって、わたしも夜は任務に出るんだ!
そして、夜。
はじめてのことばかりで疲れたのか、横になると睡魔がすぐに襲ったきた。
それに身を委ね、そっと目蓋を閉じる。
「愛、愛。起きなさい。いつまで寝てるの。」
『ふぇ?』
見覚えのある天井。
「寝ぼけてないで。学校に遅れるわよ。」
『お、お母さん!?』
「何?さっさと支度なさい。」
紛れもなくお母さんだ。
自分の部屋からリビングへ行くと良い匂いがする。
『目玉焼きとウインナー!』
「いつもと同じだけど。」
『いただきます!おいしい〜!』
母の味を噛みしめる。
なぁんだ、全部夢だったのか。
そっかそっか。
だって、ありえないもんねー。
うんうん…
あれ?じゃあ、杏寿郎様は?
死んだまんま…?
ガッ!!
愛は目を見開いた。
まだ見慣れない天井。
ぶわりと目から涙が滲み出した。
『…ふっ、お母さん。お母さぁん!うう、うう…。』
天井を見ながら、両手で顔を覆う。
現実を受け入れたかのように見えていた愛だったが、受け入れていたのではなく、受け入れざるを得なかったのだ。
ここの時代での18がどうかはわからないが、愛のいた時代ではまだまだ親の庇護の元。
恋しくなって当然である。
ひとしきり泣いたあと、愛は空に向かって呟く。
『でも、これで杏寿郎様を救える。やらなきゃ。』