第4章 継子として
岸本の手早い案内であっという間に生活必需品が揃った。
勘定は愛の気づかないうちに済まされており、総額いくらかかっているかがわからない。
『もう少し地味な着物にすればよかったです。』
「いえ、あのお色がとてもお似合いでしたよ。わたしの目に狂いはありません。」
はじめのときより、幾分か打ち解けた二人。
『岸本さんがそういうなら…』
ニコニコと笑いながら歩く。
キラッと輝くものが目に入った。
『あ、これ綺麗。』
「かんざしですね。一つあると便利です。こちらも買いましょう。」
『い、いえ。これは生活には必要ありません。他の髪留めでまかなえますから。』
大切なお金。
本当に必要なものに使わないと。
何かしらの方法でお金を稼いで、今回のかかったお金もお返ししないと。
「そうですか。では、そろそろ帰りましょうか。」
『はい、今日はありがとうございました。』
「いえ、わたしは頼まれただけです。また、いつでもどうぞ。」
女性ならでは細やかな気遣いに助けられた愛。
そして、その素敵な人を紹介してくれた杏寿郎に感謝する愛。
ここに来てから、素敵な人ばかり。
たくさんの人に助けられた。
今度はわたしも何か助けになりたい。
頑張らねば。