第4章 煉獄邸
あれから1週間が経ち、老婦人は意識を取り戻し、手伝いが必要なものの、ご飯が食べられるようになっていた。
怜:「家に、手助けしてくれる方はいらっしゃるのですか?」
老:「いないのよ…。」
怜:「息子さんや旦那さんはいらっしゃらないのですか?」
老:「私達は子供に恵まれなくてねぇ。夫にも4年前に先に逝かれちゃったのよ。」
怜:「そうだったんですか…。すみません失礼なことお聞きしてしまって。でもこのままここにずっと居てもらうわけにも行かないしどうしよう…」
その時襖が開いた。千寿郎がお膳を持ってきたのだ。その後ろには杏寿郎の姿もある。
千:「お食事をお持ちしました。昨日より少し味を濃くしたので食べやすいかと思います。早く元気になって下さいね!」
杏:「俺は治るまでここにいてもらっても構わないぞ!と怜の部屋が狭くなってしまうのは少し問題かもしれないがな。」
そしてまた人が入ってきた。
:「その心配はないわ。ある程度治るまで、身の回りのことを手伝ってくれる人を知ってる。おばあさん、少し遠くに移動することになりますが、動けそうですか?もちろんタクシーを呼ぶので、動く距離はほんの少しです。」
老:「本当にゆっくりなら歩けるけれど、私そんなにお金を持って居ないのよ…」
:「タクシー代も入院費も、治療費も気になさらなくて大丈夫です。」
老:「そんなわけには…。」
:「では完治した時私のことを見かけたら払ってください。その時までは心配しなくて大丈夫です。」
老:「ありがとう…命も助けてくれて、その後の世話までしてくれて…本当にあなた達には頭が上がらないわ…」
泣きながら老婦人は言った。
:「おばあさんのために、若い男性が1人犠牲になりました。だから誰よりも永く、1秒でも多く、生きてください。その命を大切にしてください。それだけで私たちは十分です。」
老:「ええ。ありがとう…」
:「少し出かけて来ますね。怜、おばあさんのことは頼んだわよ。」
はみんなにそう言うと、部屋を出て行った。
怜と千寿郎は部屋に残ったが、杏寿郎はの後を追った。