第2章 出会い
それは杏寿郎が任務帰りの時だった。
妙に目を引く女子がいた。少女を連れて色んな人に声かけをしている。
杏:(あれは俺と同じくらいの歳か…少女は千寿郎と同じくらいだろう。一体何をあのように声かけしているのか。)
:「あの、もしかしてその腕お怪我されてるのではありませんか?」
商人A:「あぁ、これかい?ついこないだ電球を変えていた時に踏み台から落ちちまってちょいと痛めちまったんだよ。」
:「放っておいたら痛みを引きずってしまうことになりかねません。お差し支えなければ少し見せていただけますか?」
商人A:「え?あぁ。」
商人が腕を差し出す。
:「軽い捻挫ですね。少し固定しますね。…よしっと。これで大丈夫ですよ、このまま1週間もすれば治るでしょう。1週間分痛み止めも出しておくので1日1回食後にお飲みください。」
はにっこりと笑った。
商人A:「ありがとう…。あんた何者だい?」
:「しがない医者です」
また微笑んで答えた。
杏寿郎はこの一部始終をじっと見ていた。
あの大きな瞳をさらに見開いて見ていた為、と怜はその視線に気づき少しドギマギした様子で近づくと
:「あの、何処か具合でも悪いのでしょうか?だとしたらこの子がそう私に教えてくれる筈なのですが…」
怜:「かすり傷などは確かにありますがどれもさほど大きな傷でもありません。」
杏:「君たちが色んな人に声をかけているものだから、つい気になってみてしまった!そのせいで不快な思いをさせたならすまないな!」
:「そうですか、ならよかったです。では私たちはもう参りますので。」
そう言って怜もともに軽く会釈して立ち去っていった。
美しい上に人を救って回っているなど、そんな女神のようなものが実在するのだな、そう思いながら杏寿郎もその場を後にした。