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花火 ー呪術廻戦ー

第9章 祈り



唐突に、告げられた言葉に。逆に、五条から目が離せない。2人とも、最早、寒くて顔が赤いのか、恥ずかしくて赤いのか。
息だけが、外気に触れて、白く舞う。


「これでまだ分からないとか言ったら、お前マジで体に教えてやるから」

「い、いや、はいっ」


自分から聞いておきながら、まさか本当に、好きと言ってもらえると思わなくて。顔の熱が中々引いてくれない。

そして、思い立つ。ここで、自分も。悟のことが好きということを、言うタイミングではないかと。恥ずかしくて仕方ないが、彼もきっと同じだっただろうに、ちゃんと言ってくれたのだから。
口を、開こうとして。


ー キスしていい? ー


聞かれた言葉が、頭をよぎった。
五条は、言っていた。付き合っていないから、今までは見てただけだったと。
それなら、もし。自分がここで気持ちを伝えて、恋人同士になったとして。
そうすれば、もう。彼が、見てるだけでいる理由はなくなるのではないのだろうか。


そんなことを考えて、なまえは言おうとした言葉を、飲み込んでしまった。

もちろん、付き合うということで、そういった行為が出てくることは、多少なりに理解していて。別に、五条とそういったことをするのが、嫌というわけでは無いのだ。
ただ、まだ高校一年生でしかない彼女は、事前に五条に言われた言葉に、妙な生々しさと現実味を感じて。恥ずかしさに、臆してしまった。気持ちを返すことが、そういった行為を肯定する意味になるのではと、言葉に詰まったのだ。


「何考えてんの。別に、すぐにお前の答えがほしいって思ってないから」

彼女の気持ちを知らない五条は、なまえの気持ちが自身に向くまで、関係を焦る気は無かった。

「…うん…」

もう少し、自分の気持ちが整うまでと。
結局、彼女は返したかった自分の気持ちをそのまま飲み込むことを選んでしまった。
大丈夫、時間はあると。自分に言い訳をして。










この時、素直に五条に自分の気持ちを伝えてられていたなら。

彼の笑顔を見れただろうか。

あんな君の顔を、見なくてすんだだろうか。
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