第8章 遠出
二学期が始まってしばらく。
未だ衰えを知らない残暑は絶好調で、茹だるような暑さが続いていた。
呪術訓練を終えた呪術高専一年生4人は、滝のような汗を流しながら、高専の廊下を歩いていた。
「これ、ほんとに溶ける…」
次から次へと額から流れ落ちる汗を拭いながら、なまえの足取りは非常に重かった。
これだけ体を動かした後の授業が、通常科目の英語だからだ。そしてこの暑さ。頭に入るわけがないと真剣に思っている。
「あ゛ー、授業抜けて海でも行くか」
「今の時期だと、クラゲと一緒に泳ぐことになるな」
首の襟を持って前後にはためかせ、風を少しでも取り入れようとしながら歩く五条の提案に、夏油が冷静な突っ込みを入れる。が、授業抜けるってとこは突っ込まないのかとなまえは思うが、けっこう夏油はそういうやつだと気にするのをやめた。
あの花火大会の日。
五条が高専一年メンバーの前で、なまえに対して爆弾宣言してから早幾日。
当初は、なまえもその言葉の真偽を測りかね、五条に対して今後どんな態度をとればいいのかと悩んだ。
だが、元々の距離感が近かったのもあるだろう。
五条の態度に大きな変化はなく。何を期待していたのか、硝子はそんな五条を見て、「つまんね」と漏らしていた。
ー でも… ー
となまえは思う。
確かに、表面上、いつもとは変わりなく。もしもなまえが硝子の立場だったなら、同じように何も思わないかもしれないが。
「なまえ、聞いてる?」
「あ、はいっ!」
「アイス何にすんの?」
突然顔を覗き込む五条に驚いて、なまえの肩が跳ねる。教室へ戻る途中に立ち寄った売店で、いつの間にかアイスを買う話になっていたらしい。
「えっと、ラムネ入ってるやつで」