第7章 花火大会
「さて、話もひと段落ついたところで、」
いや全然ついていないからと、誰もが突っ込みたいのを無視して、五条が後ろ手に隠していたものを、バンと正面に取り出した。
「じゃーんっ!花火しよ!花火!」
そこには、色とりどりの花火がぎっしりと詰まった、特大と書かれた袋が握られていた。
斯くして。
呪術高専のグラウンドに出てきた4人。
それぞれ手には、バケツに入った水と、蝋燭やチャッカマンを持っている。
「この学校のグラウンドって花火できるんだ」
「できるできる。見つからないのと証拠を残さないのがコツ」
「それできるって言わない…」
基本優等生の夏油だが、日々五条に毒されているのではないだろうか。
薄目で夏油を見れば、おっと、とわざとらしく口を手で覆ってみせる。
「火つけたよー」
蝋燭を立てた硝子が声をかけて、花火を選びに行こうとすれば、五条がそんななまえを止めた。
「なまえはこれね」
スッと手に花火を手渡され、先程の会話のこともあり、恥ずかしさと気まずいさで、うっと言葉に詰まるなまえ。
だが、手渡された花火を見て、ん?と目を見開く。
「って、これネズミ花火じゃんっ」
「懐かしいでしょ?」
ニヤッと笑う五条に、登校初日のことを思い出すなまえ。そういえばパンツ見られたんだと、グッと手の中の花火を握りしめる。
「パンツの仇っ」
「なにそれ」
ネズミ花火に火をつけて、五条の足元を狙うが、彼は軽々と回避していく。
いつの間にか、気まずさは消えていて。
たくさんあった花火は、その美しい光を放って、次々と消えていった。
そして、その度に4人の楽しげな笑い声がグラウンドに響き。
夏の終わりに、そこには、笑顔という大輪の花が咲き誇った。