第7章 花火大会
「硝子!!おかえりーーー!!」
学校の校門を潜るや否や、ストーカーよろしく待ち構えていたなまえが、飛びつく勢いで家入硝子へと抱きついた。
ずいぶんな勢いがあったはずだが、それに動じず受け止めた硝子は、相変わらず変わりない友人の様子に、笑顔で答えた。
「ただいまーなまえ。大人の階段のぼっちゃったんだって?」
「え?何それ、何情報?」
「歌姫先輩から狂った様にメール来てた」
「あー、あー…あれか…」
「あ、本当にやっちゃった?」
「断じて違うっ」
歩きながら、歌姫先輩情報の誤解を解くために、休み中のできごとを話しつつ、硝子の帰省中の話も聞く。
禁煙に失敗したと言っていたが、最初から禁煙するつもりがなかっただろうと突っ込みをいれるのを忘れない。
硝子の荷物を部屋へ置いてから食堂へ行くと、五条と夏油が座って話しているのを見つけた。久しぶりにみる、あの2人の組み合わせ。
休みの間一緒に過ごしていたなまえの目にも、五条が心なしか楽しそうに見えて。親友ってやつだなと、訳知り顔で頷いてみせる。
「夏油ー!おかえりー!」
硝子と一緒に、2人の方へと歩いて行き、声をかければ、少し驚いた様に目を見開いた夏油だったが、すぐにいつもの優しい笑顔を浮かべる。
「ただいま、なまえ。硝子も久しぶり」
「夏油ちょっと焼けた?」
「こいつ海行ったんだってさ」
「夏満喫してるじゃんっ」
同じテーブルの椅子に座りながら、羨まし気に夏油を見るなまえ。
そんな彼女を見て苦笑しながら、本命は明日だろ?と夏油が言えば、その通り!と目をきらめかせる。
そして、あっと思いついたように手を叩いた。
「花火大会、せっかくなら浴衣着たい!」
4人みんなで!と提案するなまえ。
「いいけど、私持ってないよ?」
「大丈夫!私も持ってない!」
「それ大丈夫って言わねぇから」
「それじゃあ、午後からみんなで買いに行こうか」
いいね!さすが夏油!と笑う彼女は、側から見てもテンションが高かった。よほど、4人が揃ったのが嬉しいのだろう。
そんななまえの様子を微笑ましく思い、夏油はなんの気はなしに、いつもの調子で。軽く、彼女の頭に手を置こうと手を伸ばし。
バシッ
その手は、触れる前に弾かれた。