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花火 ー呪術廻戦ー

第15章 差異


「うん。急にごめんね。一級術師が任務で行方不明になったとかで、悟が急遽行くことになっちゃったらしくて…」

「その辺は五条に聞いたよ。私はむしろずっといてもらってもいいけど」

「そんなご迷惑をおかけする訳には…」


なまえが11年後に現れてまだ日は浅い。
特級呪術師として忙しいはずの五条は、未だ立ち位置が不鮮明で、この時間に慣れていないなまえを一人にするのをできるだけ避けたかった。基本は自分自身が見ていたいこともあり、この1週間は生徒たちの指導を中心に、入った任務はできるだけ時間をかけずに日帰りで。

だがそれでも。やはり、泊まりを避けられない、特級の彼が必要不可欠となる遠方での任務はやってくる。

なまえは一人でも大丈夫だと話したが、いつの間にそんなに心配性になったのか、五条は首を縦に振らず。一晩、多くの人の目がある高専内、硝子のところにお世話になることになったのだ。


「迷惑じゃないって。学生の時もよく部屋に泊まりに来てたでしょ」

「あ、うん……ふふ、硝子、なんか悟と同じこと言ってる」

「…なるほど。あいつはそうやってなまえを丸め込んだ訳か」

「ちょ、丸め込まれてはないってっ」


単純だと言外に言われた気がして、意識してキリッとした表情を作れば、呆れた顔をしていた硝子が、くすりと笑った。


「そういうことにしとこうか」

「絶対思ってないじゃんっ」


美味しそうにビールを飲む硝子に、口を尖らせるなまえ。
そして、何の気はなく彼女の部屋を見回す。学生寮と比べると、幾分広いそこだが、部屋の雰囲気はあまり学生時代と変わっていない様に思う。

ただ一つ、圧倒的に違うところに気付き、なまえは硝子の顔を見た。

「タバコ…」

「ん?」

「硝子、タバコやめたの?」

初めて大人になった彼女に抱きついた時も感じた違和感。学生時代は部屋や服に染み付いていたタバコの匂いが、大人になった彼女からはしなかった。普通逆ではと思うが、そこは気にしない様努める。

問われた彼女は、ああ、そういえばそうかと、グラスをテーブルに置いた。その置き方は、静かで。話し方も、どこか学生の頃より、落ち着いたように感じる。
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