第4章 一ヶ月後
「はぁ…マジ最悪…」
痛そうに、左手で恐らくたんこぶがあるだろう頭を押さえて悪態をつきながら歩く五条。一緒に歩くクラスメイトの3人は、確実に五条の声が聞こえていたが、無視することを選択した。
「明日からGWだけど、どっか行く?」
「東京観光行きたいです!」
「なまえ、東京初めてって言ってたもんね。賛成〜」
「くぉら、生意気に無視してんじゃねーよ!」
気分を害した五条が、左腕を肘ごとなまえの頭に乗せ、ぐりぐりと体重をかけてくる。どうして私ばっかり!身長のせいか!と思いながら、痛い痛いと叫びつつ、かけられる体重に、両手で何とか対抗する。
その姿を見て、幾分か溜飲を下げたのか、左腕はなまえの頭に置いたまま、五条が話に混ざる。
「で、東京のどこ行くわけ?」
「東京タワー!」
間髪入れず答えれば、THE観光地だね〜と硝子が笑う。
「何の捻りも無いけど、いいんじゃない?」と夏油が賛成して、なまえは満足そうに笑った。
東京タワーに、一度行ってみたかったのだ。友達と。
入学初日は、高校生活がどうなるかと心配したが、想像していた以上に、このクラスはなまえに馴染んだ。
まだ一か月だけれど、このクラスにいることが楽しいと思うし、クラスメイトも個性的だがなんだかんだで仲良くしている。
一緒にゲームして、お昼を食べて、休日は旅行して。
夢見ていたような、学生生活だった。
嬉しさで頬が紅潮してきたなまえを見て、一瞬目を見開く五条。
だが次の瞬間には、また揶揄うような笑顔を顔に乗せた。
「迷子になんなよ」
「なるかっ」