第14章 高専
そして、スマホのことが何も分からないなまえを置き去りに、店員と五条が購入する携帯について話を進めていく。
iPadという見慣れない機械と、ギガだのなんだの耳慣れない言葉に目を白黒させていたなまえだったが、料金の話になった時、店員が持つiPadに示された料金に、「ひっ」と息を呑む様な、悲鳴に似た声が漏れた。
その声に、店員と五条が視線をなまえへと向ける。
「え…あの、これが、携帯のお値段…?」
「はい。一括購入だとこちらのお値段になります。もし分割でしたら、月々の料金にプラスして、月額はこちらの料金になります」
「……え?」
丁寧な店員の対応にも、なまえの口からは、間抜けな声しか出なかった。
正直に言おう。
想像以上だ。想像以上に高い。高すぎる。
思い出すのは、以前使っていた携帯。その購入手続きは親と自分でしたが、こんなアホみたいな値段ではなかったはずだ。2倍どころか3倍近いのではないだろうか。機種代も月額料金も。
(え…11年で物価が高騰した…?)
恐る恐る五条に、「うまい棒って今も10円?」と聞けば、「話の脈絡って知ってる?」と聞き返された後、多分10円なんじゃないと答えが返ってくる。
ということは、物価は別に高騰した訳ではないのだろうか。うまい棒でそれが分かるかは知らないが。
それじゃあ残るは、物の価値観がバグっている悟が通常じゃあり得ない高級品を買おうとしているのだ。
なんの疑いもなく、その答えに行き着いたなまえは、「それじゃこれで」と値段の話なんてすっ飛ばして購入を決めようとしている五条の左腕を慌てて掴んだ。
「ま、待って!あの!私もっと普通の携帯でいいんで!一般庶民が持つやつ!」
「はいはい、オマエの笑える話は後でちゃんと聞いてあげるから。あ、色はこのピンクので」
「今聞いてほしい!ちょっと、私一般庶民だから、今後その高級な携帯料金を払っていけるかあやしくて…!」
「どーゆー勘違いしてんのか知らないけど、これ一般的なやつだから。あと料金は気にすんなって言ってるでしょ」
こっちの契約と支払い一緒にしといてーと。店員に告げる五条に、なまえは恐れ慄く。携帯料金まで五条悟におんぶに抱っこでは、もう二度と彼より枕を高くして寝ることができない。